奈良小児呼吸器疾患研究会に参加して
昨日は、ホテル日航奈良で、学会と医師会忘年会をはしごしてきました。
肝心、肝腎という言葉は、ここが死守線だよ、ここが病気にやられるとダメだよという意味ですが、肝肺症候群という病気があります。
生後2か月ころ、十二指腸からなんらかの感染が胆道系に逆行して引き起こされる胆道閉鎖症という病気があります。手術してから数年~十数年後、肺の毛細血管が拡張し、病的右左シャントが生じ、動脈酸素飽和度が低下し、進行すればチアノーゼを起こすことがあります。肝硬変様の病態(=肝線維化)を有するため、門脈圧が亢進し、静脈圧が上昇し、さらに静脈系が容量拡張することで、一回心拍出量が増加し(←心臓には右室に入った血液を全部正直に肺動脈に一回で送り込む習性があります)、肺血流量が増し、肺毛細血管にsheer stressがかかり、中膜筋層のない脆弱な毛細血管から血液が漏出し微細な肺損傷を起こし、その結果、肺動脈に炎症が波及し、血管内皮エンドセリン分泌を発端とする動脈硬化様のサイトカインストームで肺動脈中膜筋層肥厚を起こし、肺血管抵抗が増し、肺高血圧症になることがあります。
病的右左シャントが生じた段階で、(←肺換気不均衡で生理的右左シャントは存在する)、生体肝移植適応なのですが、肺高血圧症が進行してしまうと生体肝移植適応外となりますので、常に注意を怠ってはいけません。
Fontan術後も同じ病態生理を有し、同じ経過をたどるので、同様に門脈圧亢進や右左シャントに注意を怠ってはいけません。
また生体肝移植時の輸血でE型肝炎ウィルス感染に要注意です。
・ 肝肺症候群と気管支喘息の鑑別法
気管支喘息は、起坐呼吸。臥位酸素飽和度<座位酸素飽和度
肝肺症候群は、扁平呼吸。臥位酸素飽和度>座位酸素飽和度
気管支喘息は下肺野の肺換気が健全なので、座位によって下肺野の換気に頼るほうが楽。
肝肺症候群は下肺野の換気自体が病的なので、右左シャントが座位によってさらに増悪するので臥位のほうが楽。
扁平呼吸は下肺野自体の病変の際にも起きます。
・ 肺炎の鑑別
(1)肺胞性肺炎 サラサラとした痰がKohn孔を経てどんどん広がる大葉性。気管支自体が健全なのでair bronchogramが特徴。
(2)気管支肺炎 ネバネバとした痰が気管支や細気管支から肺胞に少しだけ流れ込む小葉性。
(3)間質性肺炎 間質に炎症をきたし、肺換気効率が落ちる。スリガラス状陰影が特徴。
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